抹茶とは?茶道マインドフルネスコーチMiki先生が解説 - Part 1

What is Matcha? Explained by a tea ceremony teacher Miki Sensei - Part 1

抹茶とは何か、どういうお茶なのか、何がスペシャルなのか、と外国人の皆様に呈茶させて頂く際、よく聞かれます。実際、これに正確に答えられる日本人も少ないのではと思います。

特性を立てる二点、①茶種として、そして②文化歴史上での成り立ち、二つの側面から観ていきましょう。

まず、①お茶の種類として何者か。


抹茶は漢字で書くと抹:擦った+お茶、という意味ですが、いわゆる一般的なgreen tea(煎茶)を石臼で挽いたものが抹茶なのか、というとそうではありません。

”抹茶”っぽく売られているものの中には(特に日本国外において)、実際の抹茶の他、煎茶製造工程で出た煎茶の粉末や、煎茶を顆粒化したものが抹茶として売られている場合があります。その色も香りも味わいは当然異なりますので、ぜひ本物の抹茶を茶々舞舞でお楽しみいただけたらと思います。


抹茶の定義は社団法人日本茶業中央会によると「覆下栽培した茶葉を揉まずに乾燥した茶葉(碾茶)を茶臼で挽いて微粉状に製造したもの」とありながら、前述のように現在の混濁し荒れ気味の流通実態を踏まえ、世界基準をISO(国際標準化機構)もその定義を検討中とのこと。抹茶の原料となる碾茶、たらしめる大きな違いは二つ;覆面栽培と揉む工程がないことです。

碾茶、そして抹茶になる工程、そもそも何者なのかをみていきましょう。

みんなチャノキ

抹茶も煎茶も、紅茶も中国茶もお茶の木、チャノキの葉から作られています。

同じツバキ科ツバキ属の永年常緑樹、学名をカメリア・シネンシスといいますが、葉が小ぶりで寒さに強い中国種(主に緑茶の原料)と、葉が大きく寒さに弱いアッサム種(主に紅茶の原料)があり、日本では中国種が中心に栽培され、抹茶が作られています。

どこに育つ?


お茶栽培に適している環境は

  • 水はけ、通気性、保水性のある土壌
  • 土壌の粘度率が低い(火山の近くの火山灰質)
  • 一般作物より低い土壌(ph4‐5)
  • 温暖湿潤、一日の寒暖差がある気候(一年平均14‐16度、冬‐5度以下夏40度以上にならない)

 

以上から日本では富士山のある静岡、桜島のある鹿児島、そして腐葉土の蓄積に恵まれた京都宇治が特に有名。

どうやって育つ?

お茶の木は現在、通常種を撒くのではなく、挿し木という方法で苗を大きくし繁殖させていきます。それは二つの理由から。一つは、チャノキはほとんど自家受粉しないため、同じ品種を増やそうとすると挿し木でしか育てられないこと。
もう一つは品質を安定させるためです。つまりチャノキは他の茶の花粉であれば受粉しやすいですが、そうやってできた種はいわゆる雑種にあたり、性質が異なり品質が安定しないのです。
挿し木法にすることで、すぐれた品質のお茶の木と同じ品質を保証することができます。

新しく植えた苗は4年ほどで葉を収穫出来るくらいに育つのですが、実際に収穫量が安定するには10年ほどかかります。そして一般的に30‐40年で老衰が始まり、植え替えが必要になります。

茶園の一年

1.茶畑の整備(冬前)
翌年の茶葉の採取をしやすいように茶畑の茶木列をかまぼこ上に整えておく

.霜対策(3月)
新芽が出始める頃、茶葉にとって霜は大敵なので、専用の扇風機で風を起こしたり、ネットをかけるなどして対策する。

3.☆覆下栽培(4‐5月)
採取の2-3週間前陽の光が当たらないように茶畑ごとよしずや布の柵で覆って育てます。このプロセスで豊かな覆香と、鮮やかな緑色、新芽に旨味(成分としてはテアニン)を集中引き出します。

4.新芽を手で摘採(5-6月)
このタイミングと時間帯が抹茶の味、品質を大きく作用します。
※日本では立春から88日経つ頃、つまり立夏の頃、田の籾撒きと並び、夏を迎える風物詩として新茶を摘む光景を謳う童謡もあります。特にこの日から20日間の間に摘まれたお茶が最も美味しいと言われ、濃茶用(茶道の茶事ではメイン、ハイライトとなるお茶)として売られます。

5.蒸す
摘採後すぐに高温蒸気を10‐20秒当て酵素の働きを止め酸化を防ぎます。蒸し時間を短時間にすることで鮮やかな緑と覆い香を引き立てます。

☆揉まない
煎茶などは茶葉をお湯で抽出して飲むために大事な工程ですが、抹茶は茶葉ごとお湯と頂くためこの工程がありません。つまり抹茶はより素材そのもの味と質、栄養をまるごと頂ける点が特異です。

6.冷却
冷却拡散機で蒸した茶葉を5‐6mの高さまで風を吹き上げては落とす動きを繰り返し、冷やしながら露を除去し、葉の重なりをほぐします。

7.乾燥
高温乾燥炉でゆっくり水分を飛ばし乾燥させながら香りを引き出し、旨味を凝縮していきます。

8.選別
乾燥した茶葉を裁断しながら余分な茎や葉脈などを取り除き、ふるいにかけ不純物を取り除きます。

9.仕立て
品質を低下させる茎葉を取り除きうすで挽きやすい5㎜程度に細かくし、低温でゆっくり乾かす。

10.仕上げ乾燥
葉の部位に適した温度で保存に適した水分量に仕上げます(粗碾茶)

11.熟成、仕上げ
粗碾茶を一定期間保存熟成し、さらに選別、仕上げ火入れをする(仕上げ碾茶)

12.石臼で挽いて抹茶に
温度と湿度を一定に保った室内で、一定の速さで回転する石臼で仕上げ碾茶挽きます。
石臼一台からの粉砕量は1時間に40‐50gほどです。



この時の摩擦熱により抹茶の香りと風味がさらに引き出され、石臼による不均一な粒子があの抹茶の独特の口当たりを生み出します。

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ここまで読んでくださったみなさま、ありがとうございます。
いかがですか。
抹茶との向き合い方、頂き方が変わりませんか。
背筋がピンと、畏敬と感謝に震えてしまいます。

お茶は多くの職人の方々が引き継がれてきた知恵と技、自然の恵みがあってこそ我々がおいしくいただくことができる奇跡、ギフトだとしみじみ感じます。
今日の一匙、一杯をありがたく大事に味わいたいですね。
心身隅々まで清らかに潤う力を今日もありがとうございます。

次回は抹茶のもう一つの大事な側面、文化歴史の流れから抹茶を親しんでまいりましょう。

👉後半の記事はこちら

 



著者:

 

藤﨑美紀 Miki FUJISAKI

ひばな(hibana to bloom) founder, tea life facilitator/coach

Webサイト: https://www.hibana-to-bloom.com/
Instagram: @hibanatobloom


大阪府出身。JAL CA時代に裏千家茶道を習い始める。ロンドン在住中に和カフェ(「Matcha」、「Cha no Ma」)の企画・運営、帰国後は海外事業部にて海外⇄日本の企画・運営に携わる。カフェ、茶の間、茶室に通じる、異なる存在が共に在ることでそれぞれのいのちがありのままに照らされ生かし合う場や関係性を探究すべくコーチング、ファシリテーションを学ぶ。

現在は「在る 在り合う」世界を今ここ私あなたから現すinterbeing をテーマに茶室やサロン、オンラインで、個人、企業向けに、茶道xマインドフルネスxコーチングのお茶会、お稽古、セッションを開いている。

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