外国人の方の茶道体験の場でよくこんなご質問をいただきます。
「こういうお茶会を日本人はどんな時にするんですか?」
会を開いている側の日本人全員が一転伏目がち申し訳なさそうに
「残念ながら昨今では多くの日本人が一生に一度もお茶会を経験することがありません。」
と答えます。
6年前の文化庁の調査では、お茶(茶道)を一度でも経験したことがあるのは全体の約33%、茶道を習っている(/習っていた)人は、約1.4%の約170万人といわれています。
多少の誤差はあると思いますが、多くの日本人が抹茶を点てるお点前も、客側の作法も知らないのが実情です。

冒頭の質問の戻ると、答えにきょとん?とされる外国人の皆様に続いてこうお答えします。
「私たちのように茶道を習っている者たちが、大切な人や行事、季節の節目などにお茶会を開いてます。普段のお稽古はこのお茶会のためのすべてです。」
ここまで聞いて皆様はますますきょとんとされるようです。
日本文化の総合芸術と言われるお茶は多くの日本人にとってもそれほど特別、非日常のものになっています。
いくつか理由はあります。
まず全体に茶道人口が減っており、その背景としては、生活様式の変化(現代、多くの日本人は畳の部屋をもっておらず、椅子生活、洋服)、お家元制に代表される時間とお金がかかることや着物や正座、作法の厳しさなどのイメージと一部事実があります。
着物に関しても同じで、着物を着たことがある日本人の割合は約半数ですが、着物を自分で着られるのはその1/ 5、全体の約10%(実感として実際はこちらも1%程と思います)といわれ、戦後加速的に素既に日本人の日常生活文化ではなくなっています。

例えば、私の母親世代(現80才くらい)までは、’嫁入り修行’としてお茶とお花、和裁を嗜んでいることは一般的でした。家に入り、女性としての文化教養が’いい嫁’の最低条件だった時代です。その名残でもともと武家社会で隆盛を観た茶道も今は女性が茶道人口の8割を占めます(同時に、各流派のお家元や業躰(弟子)は今なおほぼ全員男性で変わりないことは興味深いです。)。
現在は、他の武道と並んで日本人としての素養や精神鍛錬のお稽古として習われてる方々に茶道は引き継がれています。(お稽古はいったい何をやってるのか?という質問もよく受けます。お茶を点てるだけなのに、毎週、毎月、何十年も何を習うんだ?というご質問。お点前やお道具の種類が何百もある、以上に精神鍛錬なので一生終わりがないのです。前回の美についてのコラムもご参照ください。)

そもそも、お茶会、というのは、亭主が大切なお一人(とお連れの皆様)をおもてなしするためにと精魂込めて数カ月かけて準備おもてなしするお茶事(懐石とお酒、主菓子と濃茶、干菓子と薄茶までの約4時間の正式なお茶席)を略して、お菓子と濃茶または薄茶をいただくお席の事を指します。大切な方のために開くこともあれば、特別なお道具のお披露目の場として、時節の室礼、テーマにのっとりおもてなしするお席があり、数名から数十名規模のものまであります。
お茶会は茶人や茶道家が開かれる他、お茶碗などお道具をつくられた陶芸家やアーティストが自ら茶席をもたれることもあります。お茶事は濃茶が主役ですが、お茶会は亭主の趣向、遊び心がよりのびやか軽やかに表現されることが許され期待されている点、親しみやすい愉しさがあります(私のお茶の先生はノスタルジックな昭和茶会で、旅箪笥に見立てておかもちを使ったり、お床にガチャガチャテレビを置いたりしてました)。
茶道を嗜まれてる(お稽古されている/されていた)方々同士で開かれるフォーマルなお席のイメージがありますが、お茶の経験のない初めての方も参加できるお茶会も最近は増えています。我々日本人でも初めてのお茶の場は緊張します。簡単なお作法や楽しみ方をお話しくださるようなお茶席だと安心ですし、受け身の体験を超えた学びとなるでしょう。

特に外国人の皆様は”茶道体験”という形で体験ツアーのサイトなどから”茶道体験”を申し込むことができます。正直内容クオリティは玉石混交ですので、茶道が何なのか、茶会とは何なのか、を体験されたいのであれば、日本に来られる際にはぜひ茶々舞舞、もしくは私にご相談いただけたらと思います。ご希望に合わせてプランをご提案させていただきます。
抹茶を頂けるすてきなカフェは世界中にありますし、日本ではお寺の庭園など眺めながらお薄(薄茶)とお菓子をいただける場所もたくさんあります。
ですが、もし機会が許せば、その元にある茶道の場; 実際露地や気を鎮め、手水で心身を清め、お茶室で床を拝見し畳に座り、実際にお道具に触れ、五感を開いて味わい分かち合う体験をしていただくことで、その先のお茶のある毎日が全く異なった奥行きを持つことと思います。
そして、世界のそこかしこであなたが私が大切な人とお茶会を開いている、そんな日を思い描きながら私は今東京でこのコラムを書いてます。いつか東京やカリフォルニアでお茶の場をご一緒できることを楽しみにしてます。
著者:
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藤﨑美紀 Miki FUJISAKI ひばな(hibana to bloom) founder, tea life facilitator/coach |
大阪府出身。JAL CA時代に裏千家茶道を習い始める。ロンドン在住中に和カフェ(「Matcha」、「Cha no Ma」)の企画・運営、帰国後は海外事業部にて海外⇄日本の企画・運営に携わる。カフェ、茶の間、茶室に通じる、異なる存在が共に在ることでそれぞれのいのちがありのままに照らされ生かし合う場や関係性を探究すべくコーチング、ファシリテーションを学ぶ。
現在は「在る 在り合う」世界を今ここ私あなたから現すinterbeing をテーマに茶室やサロン、オンラインで、個人、企業向けに、茶道xマインドフルネスxコーチングのお茶会、お稽古、セッションを開いている。
