お茶で調う:調身・調息・調心 - 茶道マインドフルネスコーチMiki先生コラム

Body, Breath, Mind: Finding Balance Through Tea - Written by tea ceremony teacher Miki Sensei

今海外のいたるところで第何次抹茶ブームで、先日ロンドンに行ってきた紅茶教師の友人から、かつての紅茶売り場の半分が抹茶になっていたと聞きました。

味やビジュアルに増してgreen teaをはるか上回る栄養価やコーヒーを代替するカフェイン効果がどんなに甘くても罪悪感なく飲めるドリンクとして欧米では市民権を得ているのでしょう。

”抹茶ドリンク”、としてはおそらく日本の都市部ではスターバックスを除けば、そこまでの熱は見られず、かといって、われわれ日本人が家で抹茶を飲んでいるかというと、日常の煎茶やほうじ茶のように常備し日常的に飲んでいるのは、我々茶道を嗜む人間を入れても10%にも及びません。

我々日本人にとって抹茶といえば茶道、という認識があるので、抹茶と抹茶ドリンクを頂くのとでは自然と意識が大きく違います。

つまり、抹茶は飲むもの、というよりは点てるもの、点てられるもの(参照:コラム「点てるとは」)と刷り込まれているので、頂く側もたとえ茶道経験がなく作法を知らなくても、自然と背筋をのばし、両手で持って大事に味わって頂く、云い方を変えれば、そんな調いたい時に抹茶を頂くという認識が多くの日本人にはあります。

抹茶とは何か、ということをいろんな角度でこれまでお話ししていますが、茶道においてお茶を点てる、というのは先のコラムでご紹介したように、混ぜる、や泡立てる、行為や作業ではなく、精神的な身体所作、運用に基づくものです。

その起源は、やはりお茶は薬としてに加え、禅宗の儀式、修行として日本にわたってきたものであるということがあります。
お茶の効用として、頭がすっきりして集中力が増す、というのは結果で、そのお茶を育て、飲めるように点てるプロセス自体は修行、鍛錬なわけです。

では、精神的、身体運用的にどのように点てるのか。

その基本は座禅にあります。日常生活や社会、人間関係の問題や争いなど外側で起こることは一人一人の内側の表れである、つまり内側を調えることが肝要だと。その方法として座禅の基礎、①調身:身体を調え、②調息:呼吸を調えて、③調心:心が鎮まるとありのままを観察できる 、が今日まで浸透してます。

それぞれ順にご説明しますので、実際に椅子に座ってご自身で試してみてください。

①調身:身体を調える
  1. 立って上下左右に伸びて、身体、特に首肩背中を緩める
  2. 椅子に少し浅めに座りお尻が落ち着く場所で仙骨を立て背筋を伸ばし、百会(頭頂)は天に引っ張られている意識。
  3. 脚を肩幅に開き、足の裏でしっかり地面を感じる。土踏まずを丸め踵と脚の五本指でしっかり地面をつかむ(意識)。
  4. 上半身はゆったりやわらか、下半身はどっしり安定させる。脚はずっと踏ん張っている(上虚下実)。
②調息:呼吸を調える
  1. 頭頂の天を開けて空気が入ってくるイメージで息を吸う
  2. その息が身体を通って足の裏から息を吐く。吐くごとに地球の中心に向かって根を張っていくイメージ。
  3. 吐ききったら、自然に入ってくる空気を吸い、足の裏から長く吐く、を繰り返す。
  4. 丹田に気が充実し、下半身のどっしり感が増す感じ。上半身が固くなる場合は都度息を吐きながら緩める。
③調心:心が鎮まり、ありのまま真実を観る

心が鎮まっていくのを感じる。頭が空っぽになっていく(思考が止まる)。
ありのままに観察できる心身の状態になる。

この座禅の心身の状態で、丹田を心柱としてゆったり軽やかにお茶を点てます。畳で正座でも同じです。

心身呼吸が調っていないと、調っていない自分(お茶)、を相手に差し出すということになります。言い換えると、本来、この状態でないと、お茶は点てられない、ということです。

調ったお茶は、それを供される頂く人の心身を調えます。

お茶(茶道)はその通わし交わり合いなのです。それはご自分がご自分に対して点て頂く場合も同じ。

状態、波動が場や人、現実をつくるとは、今では量子力学でも説明できる通り、1500年前にはすでに実践活用されていました。、
自分がどんな状態で今あっても、私たちは立ち止まり、身体と呼吸で波立つ心、その心が作る世界を調えることができます。お茶(茶道)が何百年も引き継がれてきているのはその祈りの実践だからではないでしょうか。
お茶を点てると落ち着く、と思われるのであれば、それは、抹茶という自然の純粋で繊細なエネルギーの力なのかもしれませんね。

ご自分に、大切な人にお茶を点てられる機会に一呼吸、立ち止まり観察する、間を持たれてみてください。
いつもの薫り、味わい、一口、ひとときに大きな違いを感じられることでしょう。



著者:

藤﨑美紀 Miki FUJISAKI

ひばな(hibana to bloom) founder, tea life facilitator/coach

Webサイト: https://www.hibana-to-bloom.com/
Instagram: @hibanatobloom@mikiwisteria


大阪府出身。JAL CA時代に裏千家茶道を習い始める。ロンドン在住中に和カフェ(「Matcha」、「Cha no Ma」)の企画・運営、帰国後は海外事業部にて海外⇄日本の企画・運営に携わる。カフェ、茶の間、茶室に通じる、異なる存在が共に在ることでそれぞれのいのちがありのままに照らされ生かし合う場や関係性を探究すべくコーチング、ファシリテーションを学ぶ。

現在は「在る 在り合う」世界を今ここ私あなたから現すinterbeing をテーマに茶室やサロン、オンラインで、個人、企業向けに、茶道xマインドフルネスxコーチングのお茶会、お稽古、セッションを開いている。