今回はお茶のお道具、特に茶筅についてお話いたします。
お茶室は五行の木火土金水の要素があらゆる形で含み成り立っていることから宇宙であるといわれます。実際お茶の時間はそれを感じることができ、だからこそ古から私たちは縦横無尽に源に繋がれるこの世界に魅かれ400年この文化が続いているのではないかと思います。
目に見える形としてお道具も然りで、お茶盌や菓子器が焼き物(土)、釜は鉄(金)など様々な素材が使われますが、最も多用されているのが竹です。茶筅に茶杓、柄杓、を初め、蓋置や花入れに使われることもあります。
竹は日本古来最も身近な植物のひとつで、成長が早く、丈夫である特質が素材として有用であるだけでなく、その空洞と節目をもって天に向かって勢いよくまっすぐしなやかに伸びる姿に生き方や在りようの理想を重ねてきた文化があります。
日用品にも活用されてきた竹がお茶の道具に多用されるのは不思議ではありませんが、お茶のお道具としてはより神聖な役割があるのではないかと思います。
竹で作られる茶筅、茶杓、柄杓はすべて手に扱い、私たちの手指の延長として、腕手と一体となって湯水を掬い、茶を汲み、茶を点てます。私たちを自然、大いなるものとつないでくれる道具に竹がつかわれていることに敬愛を感じずにはいれません。特に茶杓は亭主自らが竹を選び削り相応しい銘を付け、会のスポットライトを担う役割を持つようなこともあります。
正式には茶事茶会の度に、お迎えするお客様のため、そのお茶席のために新しいお道具をつくり、誂えます。特に竹や白木のお道具は清らかさの象徴としての意もあり一度一期に使い切るものとされています。茶室自体も本来一期のために建て、終わったら壊すほど、それくらい、一人のお客様をお迎えするとは全身全霊、命がけの心気で向かい執り行うという点で、武士たちに広まったのは理解できる気がします。
お茶の三千家の茶道具はそれぞれのお好み(型)に則り千家十職(茶碗師、塗師、指物師、金物師、袋師、一閑張細工、竹細工・柄杓師、土風炉・焼物師)、いわゆる専属ギルドにより代々作り継がれていますが、ここに茶筌師は含まれていません。

茶筌は道具の中でも消耗品といえます。その一つ一つが茶筅師により今も手作業で作られています。日本の伝統工芸の一つとして、今も日本で作られている茶筅のほぼ100%が奈良県生駒市高山町の16軒で作られています。ほぼ全国で竹が育つ日本でずっと今もここでしか作られていません。一説によると、かつてこの地にあった高山城で職を失った下級武士が茶筅を作り始めたといわれ、今でも一子相伝(家の長男にのみ伝えられる)、しかも口伝というクローズドな継承文化により守られており、作業は夜行われてきた(職人さんによっては今も)そうです。そんな同じ’し’であっても師ではなく´士’のプライドが十職入りを望まなかったのではと茶筅師の谷村丹後さんは話されています。
全てのお道具のように茶筅も相当な手間と技術で作られる芸術品でありながら、それらのお道具や同じ消耗品であるお茶やお菓子とは違って、作者や銘が付け語られることはありません。それでいて、この茶筌だけは茶道において唯一代替が効かないお道具です。お茶碗もお茶杓もお茶入れも、なければあるもので変わりがききますが、お茶を点てるのは茶筅でしかできません。

年末に谷村丹後さんにお会いし、目の前で茶筅づくりを見せていただき楽しいお話をうかがいました。どの工程もため息が出るほど美しく、第四工程の糸掛けを体験させて頂き、最後の行程、仕上げ、が施されていくその手は魔法のようで、一手ごとに茶筅が清らかに楚々生き生きと息吹を吹き込まれるようで、仕上がったそのなりの美しさはいつまでも見ていたいほどです。この芸術品が名も持たない消耗品というところに日本のはかなさへの美、移ろうものこそへの姿勢態度が象徴されているように思い、茶筅の扱いが変わりました。茶筅、何を見て、どう付き合われてますか。
次回はこの熱のまま、さらに茶筅が作られる工程、良い茶筅とは、そして茶筌の扱いについてお話しいたします。
著者:
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藤﨑美紀 Miki FUJISAKI ひばな(hibana to bloom) founder, tea life facilitator/coach |
大阪府出身。JAL CA時代に裏千家茶道を習い始める。ロンドン在住中に和カフェ(「Matcha」、「Cha no Ma」)の企画・運営、帰国後は海外事業部にて海外⇄日本の企画・運営に携わる。カフェ、茶の間、茶室に通じる、異なる存在が共に在ることでそれぞれのいのちがありのままに照らされ生かし合う場や関係性を探究すべくコーチング、ファシリテーションを学ぶ。
現在は「在る 在り合う」世界を今ここ私あなたから現すinterbeing をテーマに茶室やサロン、オンラインで、個人、企業向けに、茶道xマインドフルネスxコーチングのお茶会、お稽古、セッションを開いている。
