「点てる」とは?茶道マインドフルネスコーチMiki先生が解説

More Than Whisking: The Meaning of Tateru - Explained by a tea ceremony teacher Miki Sensei

茶道において、また抹茶の頂き方として、煎茶や紅茶など茶葉を抽出していただくのを「淹れる」というのに対して、抹茶だけは「点てる(たてる)」といいます。
この「点てる」は日本語でも抹茶にしかほぼ使わないため日本人でも読める方使う方は限られているかもしれません。

この「点てる」とは何か、そして英語では”whisk”と訳されがちなこの言葉の意を考えてみたいと思います。

まず「点てる」という言葉は「点」という漢字が使われています。
この漢字が使われるようになったのは江戸時代後期の井伊直弼以降ともいわれ、それまではおなじ音の
「立てる」が使われていたそうで、すでに煎じて「淹れる」お茶とは区別されていたことがわかります。意味と音から「奉る」の精神がすでにここに伺えます。

それからなぜ点があてがわれ今に至るのか。
そして茶道においてお茶を点て、仕舞うまでの一連のprocedureをお点前というのはなぜか。

点という字は中国の亀の甲羅を使った占いの印が由来で、
印(しるし:mark)
成果
灯す
注ぐ
触れる
交わるところ
などの意味があります。

ヒントがあります。

ー量子力学的にいうと、この世界は点(粒子)であり波でできている。
通常、波性に流れているものを意識(フォーカス)すると点と認識できる。
そしてその点は震え続けているー

時間も季節も無常の線でありその一瞬一コマは点でありその点も移ろっていく、
この点は過程でありながらすべてを含む、すべての表れでもある、
お茶とお湯、亭主と客、異なる存在、偶然の必然が一つの場に交わる、
意識、気、エネルギーという灯をその瞬間に宿す、それははかなくとも明るく周りを照らす。

これらお茶室で起こっていること、感じることに、この点の意は要となって働いていることに気づきます。
 
一言ではとても言い切れませんが(ぜひとも体験体感いただきたい)、あえて言うならば、

「点てる」というのは、移ろいの中で一瞬、一息、一手間へのcareとrespectの意識を立て続け,その交わりを照らし拡がること、その念、でありその姿勢ではないかと思うのです(念:belief、energy, mindfulness )。


もう一つ、
点てる、はwhiskなのか。
ここまでご一緒頂くと、なんでやねん!no way!と言いたくならないですか(笑)。

whiskは泡立てるの意。あえて部分的にでも訳せるとしたらharmonizeが浮かびます。

和食の料理に和え物というのがあり、それを料理研究家の土井善晴氏がmixやmelangeとは違う、互いが在ってこそ活かし合う、和してなお互いに際立たせる点でharmonizeだ、とおっしゃっているとおり、その精神だと思うのです。

お茶が初めての方にお茶を点てていただくと、なかなかふんわり泡立たず奮闘されることがありますが、泡立てているんではなく、お茶とお湯と茶筌を持つ手を動かしている私が一体となって飲まれる方に差し出す一連なわけです。

泡立て―!と泡立てるのは邪念です(笑)。お茶とお水があり湯が湧かせることの奇跡、この二つを交わらすための茶碗と茶筌への感謝とリスペクト、飲んで下さる相手(自分)がこの場に共に居ることへの感謝で満ちていると自分が消えます。その時初めてあらゆる点が集約された純粋に美味しい一盌ができ、お茶をまるごいただくことができる、私たちが自然と一体一部となれるのではないでしょうか。

流派によって美味しいお茶の点て方、見た目(泡立ち加減)は様々ですが根本の精神は同じです。なぜお茶を点てるのか、どんなお茶が美味しい、美しいと思うかも様々かもしれません。

マニュアルは参考にしながら、ご自分が美味しいと思う温度やお茶の量、美味しくいただけると思う部屋のしつらえやお茶碗、お道具をいろいろ試してみてください。

何より、点てるご自身の状態がお茶そのものをつくるわけですので、まず自分を調えることが大事です。おそらくどこにも書いていない今ここで一番美味しいお茶の点て方をご案内しましょう。

何度か伸びをしながら大きく深呼吸を重ねましょう。
そしてこの目の前の大切な人に、またはご自分に、どんなお茶を点てたいか、召し上がってほしいか、イメージします。
ふんわり、やわらか、おおらか、なのか、一気に軽やか元気になれるお茶なのか。
そして、まずご自分自身がその状態、そのお茶そのものに充分になりきりましょう。
ゆっくりと呼吸を重ねる度に、どんどんとその状態になっていきます。
すっかりなり切ったご自分で、その通りに点てます。ふんわりならふんわり。なら元気なら元気に。
そんなそのままのお茶を点てることができます。

茶道とは実はこれを型として技術として習練しているともいえます。
今日今ここそれぞれにしか点てられない美味しいお茶の型もどうぞますます楽しく磨かれていきますように。



著者:

藤﨑美紀 Miki FUJISAKI

ひばな(hibana to bloom) founder, tea life facilitator/coach

Webサイト: https://www.hibana-to-bloom.com/
Instagram: @hibanatobloom


大阪府出身。JAL CA時代に裏千家茶道を習い始める。ロンドン在住中に和カフェ(「Matcha」、「Cha no Ma」)の企画・運営、帰国後は海外事業部にて海外⇄日本の企画・運営に携わる。カフェ、茶の間、茶室に通じる、異なる存在が共に在ることでそれぞれのいのちがありのままに照らされ生かし合う場や関係性を探究すべくコーチング、ファシリテーションを学ぶ。

現在は「在る 在り合う」世界を今ここ私あなたから現すinterbeing をテーマに茶室やサロン、オンラインで、個人、企業向けに、茶道xマインドフルネスxコーチングのお茶会、お稽古、セッションを開いている。

 

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