私流のおもてなしのヒントがあれば、というお題を頂きました。
正解は人の数文化の数だけあると思いますがそれでも共通することがあると思います。
まずはお茶の世界においてのおもてなしについてみていきましょう。
亭主と客の関係性を表す代表的な禅語が2つあります。
主賓歴然:
亭主は亭主として、客は客としてのそれぞれ役割を全うすること(の重要性)
主賓互換:
亭主と客、互いに互いの想いを受け取り、相手の立場になって思いやり心配ること(の重要性)
これを一言でいうと茶の湯の精神、仕組みの象徴でもある「一座建立」といえると思います。
お茶の間、場をつくるのは亭主だけの仕事ではなく、客も裏方も、さらに言えばお道具、お花のひとつひとつ、見えない風や香り含めすべてがそれぞれの役割をもって活かし合いながら一つの場をつくろうとしてなるものであるという考えです。
亭主はもちろん、会を催すことが決まった日から、準備を始めています。

本来は茶杓や茶筅はもとよりもとは茶室自体も会のためにつくり、壊すこともあったほど、当日の数時間のためのすべて、海から山から材料を取り寄せ(馳走)、茶室内外を清め、お道具を選びしつらえ、最もすべてがその数時間に生き生きとした状態でお客様を迎えられるよう毎瞬のはからいが続きます。
客には客の作法、すなわちこれだけの亭主の手間や想いに気づき受け取る自身の状態や知識、経験をもって、場に座するわけで、ただ受け身にサービスを消化するconsumerではない能動的guestなわけです。
調べてみると、英語のhostも「客」を意味する「hostis」と「主人」を意味する「potis」の組み合わせたラテン語「hospes」が語源だそうで、これはguestと同じ語源だそうです。

つまり私はあなたで あなたは私(藤井風くんもgraceで歌ってますね)。
互いに互いの立場想いを受け取り気を巡らせて、同じ天地の間に活かし活かされ合い交わり合うというのは、実は地球に生きる術、道のようです。
その前提で、私流おもてなしとは何か、と問われると、
何を分かち合いたいか、
ということに想いを馳せます。
この時に自分が相手に何かを与えるとか、何かを起こそう、してやろう、という一方通行な思いは邪魔になります。
なぜなら、自分が茶室という間の一部として在る時に、自分の気=この茶会、この場、この時間のエネルギーを司る役割、責任があります。
自分が何を感じているかは=相手が受け取ること、相手が感じること、なはずなので、このように相手よりも自分本位すぎる場合、too muchにコントロールされる、という気をその場にいる方々が受け取り、それは大概心地よいものではないはずです。
亭主側はは分かち合いたいテーマに基づくきっかけはちりばめながらも相手の感性、反応を受け取り共創する余白余裕を持ってしつらえることが大事です。
その日の相手の立場、想いに立って準備、しつらえを考え、流れをシミュレーションします。
なので、会が始まる前に自分の中では何度かその茶会は(想像上)終わっているので、会が始まるまでに9割以上のことは終わっていて、会の最中はただ流れている感覚で、目の前のお客様や点前に集中することができるのです。

と理想を言うは難し、毎回がそんなわけではなく、当然色々起こります。
どんなハプニングも想定外も歓迎し活かすことができる平常心のトレーニングがお茶の修行でもあり、その点で私のお茶の場はsessionと呼んで開いています。
予定調和ではない場こそ異なる互いが在って生き合ういのちそのものの営み醍醐味と思うのです。
ご一緒できたお一人お一人が、今ここに居てよかった、来てよかった、と思っていただけたらささやかながらもその会のお役目を果たせたかなと喜びます。
なぜなら今ここに居るご自分を肯定祝福できることは、それにつながる過去だけでなく未来のご自分、そしてご自分につながるすべての存在への肯定と祝福につながる、その時間をご一緒できたらならそれほどありがたく嬉しいことはありません。

お一人のお茶の時間も、日々の生活も、まずご自分が何を感じているか、に意識を向けてみると、それがどんな毎日や世界を創っているかの責任と希望を感じられます。
おもてなしの起点は今ここ私から、毎瞬をチャンスに精進愉しんで参りましょう。
著者:
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藤﨑美紀 Miki FUJISAKI ひばな(hibana to bloom) founder, tea life facilitator/coach |
大阪府出身。JAL CA時代に裏千家茶道を習い始める。ロンドン在住中に和カフェ(「Matcha」、「Cha no Ma」)の企画・運営、帰国後は海外事業部にて海外⇄日本の企画・運営に携わる。カフェ、茶の間、茶室に通じる、異なる存在が共に在ることでそれぞれのいのちがありのままに照らされ生かし合う場や関係性を探究すべくコーチング、ファシリテーションを学ぶ。
現在は「在る 在り合う」世界を今ここ私あなたから現すinterbeing をテーマに茶室やサロン、オンラインで、個人、企業向けに、茶道xマインドフルネスxコーチングのお茶会、お稽古、セッションを開いている。
