野点しませんか?茶道マインドフルネスコーチMiki先生のコラム

The Art of Nodate, A Japanese Matcha Picnic - Written by tea ceremony teacher Miki Sensei

まだ暑すぎず寒すぎずのちょうど気持ちの良い季節は、大きな公園の芝生の上や川原や湖畔で風を感じ鳥の声やせせらぎを聞きながらピクニック、がてらの野点を楽しむのが大好きです。 野点とは簡単にいうと野でお茶を点てる喫する、つまり屋外でのカジュアルなお茶会です。 お気に入りの場所にござを敷いて、 お菓子は和菓子でなくともカヌレでもビスケットでも。 おままごとのようにお気に入りのボウルやお茶碗と、茶筅、お抹茶と、サーモスにお湯を入れて、 大自然と深呼吸して自分の気を調えたらそこがお茶室です。 お天気の良い日、大切なご友人ご家族を誘って野点デビューしてみませんか。

1,野点の歴史 2,野点の基本型 3,コツと楽しみ方 順を追ってお話ししましょう。

1,野点の歴史

既に茶の湯の文化が武士の間で広まっていたおり、戦国時代の武将たちが長い遠征中、あるいは狩りの最中など野外で湯を沸かして茶を喫することで心身を落ち着かせたりリフレッシュしたことが野点の原型といわれています。江戸期にそれまでの茶の湯の記録として編纂された「南方録」などによると1587年豊臣秀吉の九州平定に随行した千利休が、福岡県箱崎の松原で松葉を燃料に湯を沸かし、茶を点てたことが野点の始まりとされています(箱崎茶会)。

秀吉はこれを称賛し、天下統一を目前に自身の権威を示すために 同年10月1日の北野大茶湯でも野点形式含む1000以上の茶屋が設けられ野外での茶会が広く知られる契機となりました。

自然の風情を取り込み、茶の湯の精神性を保ったまま野外で点てるという形にまとめたのが利休です。簡素・自然・即興性を重んじる美意識が野点と非常に相性が良かったため、野点は利休の茶の湯の延長として洗練されていきました。

さらに日本にはもともと野遊び(野掛け)という野山に出て飲食や遊びを愉しむ文化があり、野点はその延長線上にも位置付けられます(野掛け茶)。松葉を燃やした煙の香りが湯に移る「ふすべ茶」など、自然の風情そのものを茶の湯に取り込むことが野点の魅力とされました。

2,野点の基本型

野点は屋外、基本的に自然の中で行うため、茶室においてその象徴である掛け軸や花はしつらえないことが多いです。既にある自然の音や景色を存分に味わうのが野点の醍醐味でしょう。

お道具も会のグレードで様々ですが、お茶を点てる最低限のお道具(棗、茶杓、茶筅、茶巾、茶盌など)がセットにまとめられた茶箱や茶籠などはかわいらしくて、野点の雰囲気が上がりおすすめです。セットとして購入することもできますが、ご自分で一つ一つお気に入りのお道具を揃えてオリジナルの野点セットをつくる楽しみもあります。茶箱や茶籠の扱いは相応のお点前ができるとぐっと風流な場になります(ご興味ある方はyoutubeなどご参照ください)。

先の北野大茶会のやまと絵(江戸時代)を見ると茶室で使うような風炉では灰と炭で湯を沸かしている茶屋の様子が描かれています。お仲間内で最もカジュアルに行うのであれば、冒頭にご紹介しましたように、魔法瓶にお湯(夏は氷水でも美味しいです)を持ち寄ったり、キャンプ用のポータブルコンロに鉄瓶ややかんでお湯を沸かすのもおすすめです(後者は熱々のお湯がいただけますね)。

ござやピクニックシートに座る以外にもテーブルと椅子で楽しむことができます。

3,コツと楽しみ方

先にご紹介した「南方録」には、野点について次のような利休の思想が記されています。
・野点には厳密な作法はない
・だからこそ景観に溺れず、自然と一体になりつつも茶の心を失わないことが重要
・道具は清潔であればよく、上等である必要はない
・ただし、自然に振る舞うには「俗を離れた境地」が必要

自由なほど難しいといわれるお茶の世界ですが、できることから気軽にやってみましょう。サンドイッチやクロワッサンでのピクニックから、タルトやクッキーでお茶を頂くなど気楽に楽しんで頂くのがよいかと思います。

それでもほんの少し、(日本の文化には、お辞儀一つとっても真行草というフォーマルからカジュアルの3(9)段階がありますが)草の中にも真を感じるお点前でお茶が点てられると程よい緊張感が場を清めることになると思います。それはつまり、お茶を点てる人の状態が調っている;感謝と敬意、安心と思いやりに満ちていること。ぜひ大自然と深呼吸して、ご自身が気持ちよく一体となってお茶を点て、頂いてみてください。

さらにマテリアルなコツを4つお伝えします。
野外と部屋の違いは3つ;①平面ではないこと、そして②風があること、③水屋(水道)がないこと ④想定外が起こりうること。
これらの対策として、

①お茶碗と棗、茶筅がゆったりおけるくらいの大きさの板やボードを持参しその上でお点前をすると安心安定してお茶を点てられます。

②茶筅が立てられなかったり、抹茶を入れようとして風で飛び散ってしまったりしますのでその想定でのご準備と風向きやタイミングをご注意ください。

③お茶を点てるお湯以外にも茶巾をゆすぐ、茶盌を洗うために別にお水を用意していると便利です。

④蜂が飛んできたり、ボールが飛んできたり、雨が降ってきたり、全て機会活用、即興性楽しむ気持ちが大事ながら、安全第一、熱いものや壊れやすいもの、貴重なもの、は充分ご留意、または予め避けての趣向をお楽しみください。

日本では熱帯化が進み’ええ季節’は短くなってきてるように感じます。それでもその日その時にしかない自然の美しさがあり、それを愛で分かち合い楽しむ茶道、野点は最高の方法だと思います。
ぜひ楽しんでお試しくださいませ。




著者:

藤﨑美紀 Miki FUJISAKI

ひばな(hibana to bloom) founder, tea life facilitator/coach

Webサイト: https://www.hibana-to-bloom.com/
Instagram: @hibanatobloom / @mikiwisteria


大阪府出身。JAL CA時代に裏千家茶道を習い始める。ロンドン在住中に和カフェ(「Matcha」、「Cha no Ma」)の企画・運営、帰国後は海外事業部にて海外⇄日本の企画・運営に携わる。カフェ、茶の間、茶室に通じる、異なる存在が共に在ることでそれぞれのいのちがありのままに照らされ生かし合う場や関係性を探究すべくコーチング、ファシリテーションを学ぶ。

現在は「在る 在り合う」世界を今ここ私あなたから現すinterbeing をテーマに茶室やサロン、オンラインで、個人、企業向けに、茶道xマインドフルネスxコーチングのお茶会、お稽古、セッションを開いている。