普段お月さまを意識して生活されてますか。
日本では「月がきれいですね」と大切な人に送るとそれは同時に「あなたを想っています(I love you)」というメッセージとして伝わります(全員にではないようです(笑))。
日本人はお月さまが好きでお月さまにまつわる文化も多いです。
それは、もともとは太陽と月の満ち欠けによる旧暦(太陰太陽暦)で暮らしを営んでいた国民だからです。明治以降、グレゴリオ暦、いわゆるカレンダーが普及され100年ほどの間に、日本に限らず、自然に抗うような効率化が進み、現在の過去から未来への直線的消耗的な生活に世界中で限界を感じ始めています。
四季の豊かな日本では、太陽と月の恩恵によって育まれたすべての命とそのつながりに敬意と感謝を感じる心が根差しており、八百万の神という特異な信仰文化があります。この二つの天体の動きをもとにした「円環する時間軸」にのっとり、生まれ、消え、巡り合い、循環し、つなげていく、自然の在り方に倣い、自然と共に生きる智慧を引き継いでいます。

余談ですが、自然があまりに自然で、日本には「自然」という言葉がなく、natureという外国語を訳す時に「自ずから然る」という漢字をあてて生まれた言葉だと言われてます。ちなみに自己肯定感が先進国一低いと言われる日本人ですが、生きていること自体が肯定なのだから自己肯定感という言葉(概念)がない国があるという話に日本人は驚くのと同じ道理です。
月というのはそれくらい私たちの暮らしの一部、つまり私たちそのものだといえます。日本語は音霊(言霊)信仰があり、音が同じ言葉は同じルーツ、響き(意味)を持つ、と言われますが、「つき」はまさに、付いている、一体である、の意です。また、臓器を漢字で書くと、心臓も肝臓もすべて月篇で成り立ってます*。

地球(大地)とくっついている月は満ち潮引き潮など水と連動しています。身体はのほとんどが水で出来ている私たちが月の影響を同じように受けないわけがありません。陸と水両方に住む蛇やカエルが使者として信仰があるのはそのためです。
もう一つ別の角度から月を見てみましょう。
日本で月というと秋です。中秋の名月(旧暦の8月15日=今年は9月27日)に、一年で最も美しいと言われる秋の満 月(陰暦の十五夜なので天文的満月とはズレが生じる)を愛でる文化があります。
元は中国の中秋節が平安期(8‐12c)に伝わり、月を眺め、歌を詠んだり、池、盃に映る月を愛でる観月の文化が貴族に広まり、その後月の満ち欠けを見て農耕のタイミングを読んでいた農民たちが五穀豊穣の祈りと感謝のためお団子などをお供えするようになりお月見の風習が広がったと言われています。当時サトイモなどのイモ類を供えたことからお団子はイモ型(関西)、または月の形(関東)につくって供えることから、中秋の名月は芋名月ともいわれます。
傍らにはススキが供えられるのは、神様の依代としての意と、稲穂に形が似ていることから見立て豊作の予祝の意があります。
そしてお月さまにはウサギが住んでいてお餅をついている(のが見える)と我々が言いますが、あなたのお国ではどういわれてますか?

最後に、この季節にお茶の席でよく掛けられる私の大好きな漢詩、禅語をご紹介します。
「掬水月在手」
訳すのは日本語でも難しく、簡単に言えば、「水を掬えば手の中に月はある」ですが、もう少し感じてみましょう。水に映る美しい月、それを愛でるだけでなく静かな心で触れよう手を伸ばすならばそれは自分の手の中にある、ということでしょうか。
美しいもの、真理、の象徴としての月、は遠いようでいて、その関わりようによってはすでに私たちの中に活かされていることに今ここで気づくことができる。
今日も同じ月を見上げることができるご縁に感謝いたします。
参考:「和暦日々是好日」LUNAWORKS出版(自然のうつろいを日々の暮らしの中に丁寧に感じるためのパートナーとして9年愛用中。おすすめです。LUNAWORKS|月と暮らす旧暦手帳 「和暦日々是好日」 )
*本稿では、漢字学的な分類ではなく、月と身体とのつながりを象徴的・概念的に捉えています。月(つき)を表す「月偏」と、身体や肉に関わる漢字に用いられる「にくづき」を、字形が共通するものとして概念的に含めています。なお、「にくづき」はもともと「肉」が変化したものであり、天体としての「月」とは漢字としての由来が異なります。
著者:
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藤﨑美紀 Miki FUJISAKI ひばな(hibana to bloom) founder, tea life facilitator/coach |
大阪府出身。JAL CA時代に裏千家茶道を習い始める。ロンドン在住中に和カフェ(「Matcha」、「Cha no Ma」)の企画・運営、帰国後は海外事業部にて海外⇄日本の企画・運営に携わる。カフェ、茶の間、茶室に通じる、異なる存在が共に在ることでそれぞれのいのちがありのままに照らされ生かし合う場や関係性を探究すべくコーチング、ファシリテーションを学ぶ。
現在は「在る 在り合う」世界を今ここ私あなたから現すinterbeing をテーマに茶室やサロン、オンラインで、個人、企業向けに、茶道xマインドフルネスxコーチングのお茶会、お稽古、セッションを開いている。
